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「京介くんが、いなくなったの」
 砂島礼子からそうきかされて、
一条豊花(ゆたか)は、まばたきを忘れた。


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 礼子が心ぼそそうにすわる病室のベッドのよこでは、
 窓わくが外の雪景色を、
 絵画のようにみせている。
 壁にかかったちいさな日めくりカレンダーは、
 一枚をのこすだけ。
 きょうは、おおみそか。
 あしたから新しい年がはじまる、
 今年さいごの日だった。

「いなくなったって、まさか、あいつ……」
 豊花がセーラー服の腕をふるわせると、
 おみまいのためにもってきた荷物がおちて、
 床をうつ。
「そう、豊花が想像しているとおり」
 礼子が豊花にそっとさしだしてきたメモ用紙には、
 みおぼのありすぎる双子の兄のやる気にとぼしい筆跡で、
 短い文がのこされていた。

『おれと礼子が生きのびるための方法がみつかった。
 かならず帰ってくるから、
 すこしまっていてくれ』

 豊花は舌うちをし、メモ用紙をくしゃりとにぎりつぶした。

「京介のくせに、あたしにだまって
 あたしの視界から姿を消すなんて
 なまいきすぎるけど、
 有言実行するところは、さすがあたしの兄というかんじで、
 それほどわるくないわね」
 礼子が「ほめているのか、けなしているのか、
 わからないわよ」と、ちいさくほほえんだ。
 だがすぐに笑みをうすれさせ、
 窓のそとを舞う雪をみつめる。

「こんなさむそうな日に、どこへいったのかしら……。
 京介くんの体は、
 ちょっとしたケガやカゼも、あぶない状態なのに……」

 豊花もためいきをつき、
 ふたつにたばねた長い髪を背中にはらいながら、
 病室のなかをみまわす。
 きがえの学生服も、玲洗樹(れいせんじゅ)の枝も、
 古代術専用の黒い杖も、術本のうつしも、
 双子の兄のもちものは、ほとんどがきえていた。

「……しかたないわね。
 ほんとうはこれ、
 礼子が入院中にすこしでもなにか楽しめるようにって、
 おみまいにもってきたんだけど」
 豊花は荷物をひろい、バッグのなかから、
 バレーボールがおさまるほどの箱をとりだす。

「あたしの父さんがね、
 競馬とパチンコでめずらしくもうかって、
 買ってくれたの。
 『本家』の歳末バーゲンで売っていた、
 小精霊がはいっているんだって」
「小精霊ってたしか、
 術者に力をかしてくれる、すてきないきものよね」
「すてきかどうかは、
 まだ開けていないからわからないけどね。
 この子にもてつだってもらって、
 京介に追跡術をかけてみるわ」

 豊花が箱をひらくと、
 なかからバレーボールのようにまるくて白いいきものが、
 とびだしてきた。

「よばれてとびでてラリルレロ!
 こんにちは、あたらしいご主人さま!
 ぼくのなまえは白玉一号、夢は世界征ふ」

 ぱたんと、豊花はいそいでふたをとじた。

「礼子ごめんねー、
 ちょっと『本家』までいって、不良品をかえしてくるわ」

 するとふたが内側からもりあがり、
 白玉一号がうるんだ目で
 うったえかけてきた。

「……返品しないでください、
 もとのもちぬしのところへ
 もどさないでください……。
 とある変人術者夫婦の家でペットをしているのがいやで、
 ぼくはがんばって
 術用の小精霊に転職したんですよ……」

「あんた、ひさしぶりに会ったけど、
 いろいろあったのね」
 豊花は笑い、箱から白玉一号をだしてやった。

「いいわ、あたしがあんたの
 新しいご主人さまになってあげる。
 あたしのことは、豊花さま、もしくは豊花ねえさん、
 あるいはユタキャサリンとよびなさいね」
「わかりました、豊花っち」
「ぜんぜんわかっていないと
 いいたいところだけど、
 時間がもったいないから、まあいいわ。
 さっそくだけど、
 いなくなったあたしの双子の兄を
 さがすのをてつだってほしいの」

 京介のおいていった手紙を豊花がさしだすと、
 白玉一号は「くんくん」と紙のにおいをかぎ、
 うなずいた。

「じゃあさがしにいってきます。
 居場所がみつかったら、
 すぐ豊花っちにおしえられるように、
 連絡用の術具をつくりたいんですけど、
 材料をもらえますか」
「材料って?」
「ご主人さまの体のいちぶでできているものなら、
 なんでもへいきですよ。
 構造上、ふたつほしいのですが、
 たとえば目玉とか、腎臓とか」

 礼子が「ひい、残酷!」と、元ころし屋のわりにこわがったので、
 豊花は「だいじょぶうよ礼子」と、カバンからハサミをとりだす。

「あたしの体のいちぶで、
 ふたつあればいいんでしょう。
 だったら、
 これをつかってちょうだい!」

 豊花は自分のたばねた髪をふたふさ、
 おもいきりハサミできりおとした。
 礼子が目をまるくする。

「オッケーです、豊花っち。
 髪がながいから、べんりにつかえますね」
 白玉一号がまんぞくそうにいい、
 きりおとした豊花の髪を材料にして、
 術具をつくりはじめた。

 それは紙コップのようなものがふたつ、
 髪をむすびあわせた長い線でつながれた、
 糸電話だった。
 白玉一号は「ほんじゃ、いってきまーす」と、
 窓をあけて雪空へとんでいった。

 外から吹きつけてきたつめたい風が、
 豊花の短くなった髪をゆらす。
 ベッドサイドにあった礼子の手鏡をのぞきこみ、
 豊花はつい笑った。

「あたしって髪が短いと、
 笑えるほど京介にそっくりね。
 二卵性なのにあいつとおなじ顔だから、
 まわりのひとにまちがわれないようにって、
 こどものころからずっと髪をのばしてきたから、
 こんなに短くしたのははじめてよ」

「ほんとうに、
 まるで京介くんがすぐそばにいるみたいで、
 胸がきゅんとするわ。
 でもよくみれば、
 着ているものはスカートの短いセーラー服だから、
 不気味でちょっと気もちわるくもなる……ううう」
「ああたいへん、
 こんなことで礼子の症状を悪化させたら、
 あまりにもあほすぎるわ」
 と、豊花がこまっていると。

『ちりりりん、豊花っち!
 虹原市のはずれで、
 おにいさんらしきひとをみつけましたよ。
 すぐにきてください!』
 術具の糸電話から、
 白玉一号の声がきこえた。
 
 豊花はあわてて術者の黒マントをはおり、
 自分用の玲洗樹の枝と糸電話をもつ。

「それじゃあ礼子、あたしもいってくるわね!
 心配しないでまっていて。
 ぜったいに京介をみつけて、
 礼子たちがたすかる方法を
 もってかえってくるからね!」

 三階にある病室の窓わくに足をかけ、
 豊花は地上から上昇気流をよびおこす呪文をとなえた。

「流れよ、大地を走る輝く女神――!」

 風にとびこんだ豊花だが、
 とんだあとで、
 おこした風が上昇気流ではなく、ぐちゃぐちゃの乱気流で、
 自分の術が失敗していることにきづいた。

 きづいたときには
 もう地上へまっさかさまに落下し、
 ふりつもった雪のうえに、まぬけに墜落する。

「……豊花、だいじょうぶ……?
 スカートが、ぶざまにめくれているわ……」
 礼子の心配そうな声がふってきたので、
 つめたい雪にうもれながら、
 豊花はこたえた。

「礼子、わるいんだけどね、ブルマをかしてくれるかしら……」

 

その2へつづきます☆

 

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プロフィール
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椎野美由貴
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女性
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小説家、楽しいものをたくさんつくるひと!
自己紹介:
ようこそいらっしゃいませ!^^ 小説家の椎野美由貴です。「バイトでウィザード」や「螺旋のプリンセス」などを楽しく書かせていただいております☆ 詳しいプロフィールは→こちら にてどうぞ☆
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