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※本作品は、2002年12月に角川書店さまより発売させていただいた
「バイトでウィザード 流れよ光、と魔女は言った」
を、修正・加筆した
「バイトでウィザード-光の魔法使い-(2015バージョン)」の
冒頭部分でございます。

シーンやセリフなど、異なる部分が多々ありますことを
ご了承のうえ、お読みくだされば、幸いです☆

(「つづきはこちらから」をクリックしていただくと、
本文が表示されます)


 満月がきれいな、ある春の夜。
「きゃああああ!」
 ひとどおりのない土手のうえに、
 ひとの悲鳴がひびきわたった。
 おびえてあとずさる若い女性のまえには、
 ナイフを手にした男性が、ひとり。
 刃を月光につめたく光らせて、
 男はふるえる声で言う。

「ひ、ひどいじゃないか、
 ずっとつきあっていたのに、
 ぼくのことを急にきらいになっただなんて!」
「急にじゃないわ、
 わたしがずっとすきだったのは
 あなたの銀行通帳で、
 かなしいけれど、ほかにもっとすきなお金もちを、
 みつけてしまったの。
 だから、とっとと別れてちょうだい」
「きー、やっぱりひどい。
 こうなったらきみを刺して、
 ぼくもこの世からきえてやるー」
 男がナイフをふりあげたとき、

 どこからか、あかるい声がひびいた。

「『よどみ』の原因、はっけーん!
 ごちゃごちゃとした低レベルなケンカで、
 声の波動とマイナス感情をばらまかれて、
 大地がけがされる、と……。
 ふんふん、
 術本のさいしょのほうにもよくのっている、
 とってもかんたんな例だわね」

 ごちゃごちゃと低レベルに別れ話をしていた男女が、
 同時にふりかえる。
 土手のうえには、夜風に長い髪をゆらして、
 ひとりの少女がたっていた。
 
 近所にある虹原(にじはら)高校のセーラー服をきているが、
 なぜかその肩には、まっ黒なマントをはおっている。
 さらに手には、
 ふしくれだった長い木のつえをにぎっている。
 月を背にたたずむそのすがたは、
 まるで童話にでてくる魔法使いだ。

「……なにかしら、この変な女の子……
 虹原高校の演劇部?」
 女が首をかしげると、
 男が「魔法使いかなにかの、コスプレってやつじゃないかな。
 顔も美少女フィギュアみたいにかわいいし」
 と、ほおをゆるめる。
 すると女が、
 「別れ話中に、とおりすがりの女子高生に
 にやけているんじゃないわよ。
 このうわき者の女ずきー!」
 と、わめいてナイフをもぎとり、
 こんどは男が悲鳴をあげる番になった。

「あーあー、もう、みていられない」
 黒マントの少女が、木のつえをふりあげ、
 魔法使いの呪文のようなことばをとなえた。

「――流れよ、大地を走るかがやく女神!
 四方展開、土地を八の針でふるわせよ。
 たつみよりいでて、鬼門へしずめ」

 その瞬間、土手をはげしいゆれがおそった。

 しりもちをついた男女をみおろし、
 黒マントの少女は、
 じぶんのほそい肩をつえでたたきながら、ほほえむ。
「いえーい、今夜もあたしの術、びしっときまって、すてきすぎる。
 勇気と正義の光流脈(こうりゅうみゃく)使い、ばんざい!」
「……こうりゅうみゃく?
 動脈瘤(どうみゃくりゅう)の検査なら、
 このあいだうけたけど……」
 男がつぶやき、
 女が「だったらわたしが、
 ぶしっと手術してあげましょうか」とナイフをまたふる。

「おねえさんたち、そんなことにナイフをつかったら、
 ナイフ職人のみなさんが、かなしむわよ」
 少女は黒マントをひるがえし、おとな二名に言う。

「ナイフというのは、
 ひとをきずつけるためにつくられんじゃないわ。
 あたしが愛するたくさんのケーキやフルーツを、
 これまたあたしが愛するあたしの兄が、
 あたしのためだけにせっせと切るためだけに、あるの。
 つまり、ものにもひとにも、
 ちゃんと愛と希望のやくわりがある、っていう話。
 だからあなたたちも、もうもめていないで、
 それぞれじぶんのために
 生きたほうがいいとおもうわ」

「よくわかったよ、どうもありがとう、
 とおりすがりのかわいいコスプレ魔法使い女子高生!
 じゃあたったいまからぼくは、
 じぶんのために、
 美少女フィギュアみたいなきみとつきあおう!」
 男がいきおいよくたちあがり、
 黒マントの少女にだきついた。
 木のつえごと動きをふうじられて、少女がわめく。

「うきゃー、あたしは魔法使いじゃないわよ、
 光流脈使いだって言ったでしょ。
 あうう、もういちど術をつかってやりたくても、
 だきしめられて
 玲洗樹(れいせんじゅ)の枝が動かせないっ。
 これじゃほんとうに、フィギュアだわー!」

 男がよろこび、女がまたどなってナイフをふりまわし、
 ナイフが少女のほうへせまったとき。
 
 とつぜんよこからキックがとんできて、
 ナイフがたたきおとされた。
 あぜんとする女をおしのけて、
 つめえりの学生服をきたほそい影が、
 男にあゆみよる。
 あざかやなまわしげりで、
 男は数メートルさきへあっけなくとばされた。

「京介(きょうすけ)、きてくれたのね!」
 黒マントの少女が笑顔になってさけぶと、
 学ランの影がふりかえる。
 きれいな顔をした少年だが、
 月光にてらされた目鼻だちは、少女とそっくり。
 手にはおなじ長いつえももっている。
「ああ京介、いつみても、あたしとおなじすてきな顔!
 やっぱりあんたは、
 あたしの愛するふたごの兄だわ」
 少女が笑顔でぎゅっとだきつくと、
 少年は無表情に首をふる。

「豊花(ゆたか)、いつもおまえはそう言うけど、
 おれをほめているのか、
 おまえ自身をほめているのか、ちっともわからない」
「もーう、ふたごなんだから、わける必要なんてないのよ。
 京介の顔はあたしの顔、
 京介のおサイフもあたしのもの」
「……さらりといま、とんでもないことを言ったな」

「それはともかく、たすけにきてくれてありがとう!
 さっき、おうちでの夕ごはんのあと、
 京介はだらだらと床にねそべっていたでしょう?
 だから兄想いのかわいい妹であるあたしは、
 『よどみ』をさがす今夜のパトロールを、
 ひとりでやってあげようとおもったの。
 だってそうすれば、術者のお給料が、
 ぜんぶあたしのものにもなるし。
 ……おっと、これは言ったらいけなかったわ」

「そんなきがしてしかたがなかったから、
 つかれはてた体をひきずってきたんだ。
 豊花がおれに、たくさんのケーキやフルーツを
 せっせと切らせたせいで」

 京介とよばれた少年は、
 豊花というふたごの妹の体を、
 そっけなくじぶんからひきはがし、
 木のつえを地面につきたてた。

「流れよ、大地を走るかがやく女神。
 地の脈を支点に、三里まで浄化。
 ならびにすべての悪意、ことだまをきよめよ」

 土手が、黄金色の光につつまれた。

 まぶしくも、どこかやさしい光に、
 別れ話を中断させられた男女は、まぶたをとじる。
 風がふきぬけ、ふたりはおそるおそる、目をひらく。
 なにごともなかったかのように、
 土手をさって行く少年と少女の、うしろすがたがあった。

 男女のあいだには、
 ナイフがぽつんとおちている。
 ふたりはなん度かまばたきをくりかえしてあと、
 おたがいに、言った。
「……いっしょに、フルーツでも食べようか……」

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からプラPVも!!
からあげファンタジーPVその3!!
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からあげファンタジーPV!!
プロフィール
HN:
椎野美由貴
性別:
女性
職業:
小説家、楽しいものをたくさんつくるひと!
自己紹介:
ようこそいらっしゃいませ!^^ 小説家の椎野美由貴です。「バイトでウィザード」や「螺旋のプリンセス」などを楽しく書かせていただいております☆ 詳しいプロフィールは→こちら にてどうぞ☆
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